障がい者雇用支援としてのわーくはぴねす農園 インタビュー

米川 幸次2011年7月21日

執行役員 障がい者雇用支援事業部長 人事部長 米川 幸次

――改めて教えてください。障がい者雇用支援サービスはなぜ必要なのですか?

去年の7月に法律(障害者雇用促進法)が改正され、法定雇用率*の計算に、新たに短時間労働者が対象に加わりました。
その結果、従業員――特に流通や外食のように、パートやアルバイトを多く雇う企業では多くの障がい者を雇用しなくてはならなくなりました。
しかし、実際には任せられる仕事が少ない――その問題を解決するために私たちのサービスはあります。

*民間企業、国、地方公共団体は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、それぞれ以下の割合(法定雇用率)に相当する数以上の身体障害者又は知的障害者を雇用しなければならないこととされています。

――具体的にはどんな業種が対象ですか?

現在のクライアントは外食産業(飲食店)が中心になります。
障がいを持った方を雇用する場合、本社で事務作業を任せることが多いのですが、外食業の場合、本社機能は通常、非常に小さいことが多いですね。

となると、店舗で雇用するのかという話になりますが、実際は難しいのが現状です。
接客は難易度が高い場合が多いですし、調理は危険だったりします・・・。

その点、当社グループが運営するのわーくはぴねす農園は、年間を通じて野菜を収穫することができますし、作業も難しくはない。安定的かつ安全に障がい者の方々に働いていただくことができます。
勤務開始後のフォローも農業指導もありますので、企業の方々に過剰な負担をかけることなく、障がい者雇用を進めていただくことができるわけです。

――飲食業向けに営業をする際、大変なことは何ですか?

第一に、価格圧力が非常に強い、ということが挙げられます。
コスト・味・安定供給の3つをすごくシビアに見られる、それが飲食業界なんです。

――「障がい者の方がつくった野菜」という価値を認めてもらうことは難しいのでしょうか。

残念ながらそれは付加価値にはなりません。消費者のこと、農園で働く障がい者の方々のことを本気で考えれば、美味しい野菜をつくることが一番の付加価値になります。
この事業の先行者であるコクヨ様からは、「『障害者が作った』はブランドにならない。生産者としての覚悟を持ってやるように」とのアドバイスをいただきました。

今は、価格面でも見合うように、ビジネスモデルを構築している最中です。
事業は、採算が取れて成り立ってこそ継続できるものですから 。

――ところで食の安全に関して、震災後は意識が高まっているのでは?

安全に対する意識が高まっているのは事実です。しかしながら、食に100%の安全はないと思います。自分が農業に携わってみてつくづくそう思います。だから100%に近づけるように努力を続けています。

本当に農業は奥が深い。私たちの野菜作り経験はまだたった半年。 安全への取り組みに対してできることはたくさんありますし、色々な実験をしています。


――震災で事業の進捗に影響があったという話を聞きましたが。

震災の前は、営業をしていても、多方面から前向きな反応が多くありました。
去年には、政府で次世代農業のアイデアをまとめる会議があり、議題として当社の事例も挙げられており、6月には結論を出すことになっていました。
それが、震災で止まってしまった。

外食産業も、震災後は、計画停電で営業できないことに加えて自粛ムードで客足が戻らず、3~4月は売上が7~8割減という会社も多くありましたので、4月までは私達の営業もほとんど進みませんでした。

――厳しい環境の中、営業面ではどのような工夫をしていますか?

障害者雇用のキーマンになっている社長様、人事の方々にこの事業の良さを本当に知ってもらうことがやはり重要になってきます。

また仕入担当者様にアプローチする時には、自社農園という切り口での営業も始めています。
「自社農園を持ちませんか?」「運営も我々がしっかりサポートします」という提案を行うと、興味を持っている会社や、過去に自社農園の検討したという会社は結構あります。

その興味から本気に一歩進める作業や、諦めた理由を潰していくということが大切になってきます。


――障がい者雇用支援の仕事をすることで、考え方や意識が変わった面はありますか?

そこはあまりないですね。
エスプールは、就業機会の少ない若者に仕事を提供して、社会人として卒業していくことを支援することを昔から続けてきました。今は、障がい者の方々も同じようにその機会を提供する仕事をしている、ただそれだけのことです。

私の前職は求人媒体を発行する仕事だったのですが、その当時から「企業の雇用問題の解決」することを仕事にしたいと思っていました。

――今後の夢は?

今はこの事業を軌道に乗せるのが一番の使命だと思っています。
もちろん大変ですけど、理念をぶらさず、続けていくことが大事。

今、嬉しいことは、私たちの理念や取り組みについて、関係者の理解・共感が高まってきていること。共感していただくお客様企業が着実に増えてきており、「一緒に頑張りましょう」と言ってもらえることがすごく嬉しいです。

個人としては、就業教育という点で何かできないかと思っています。
最近は、国の支援をもらいながら就業教育をするビジネスもたくさん出てきていますが、それは根本解決ではないと思います。 だからこそ、この事業をベースに就業教育にも取り組むことができればと思っています。

日本の雇用はこれからますます流動化が激しくなると思います。
働く側は安定を求めるけど、企業は安定を求めていない。
だからこそ、個の能力を高めていくことが課題となっていくはずです。